大工の自邸プロジェクト(6)

基礎工事開始、そして庭づくり計画


ついに着工しました。住居となる母屋と、お客さまとの打ち合わせを行う草屋根棟。現在、基礎の型枠を準備中で、間も無くコンクリートを打ち、その後、草屋根の離れから立ち上げていく予定です。次回からは、建物の姿もご覧いただけるようになります。


基礎が定まり現場が始まったこの段階で、庭づくりのパートナーであるランドデコの疋田武さんにも打ち合わせに参加していただき、実際の現場を見ながら、外構のしつらえ、造園、植栽について検討を行いました。
庭づくりは、自然環境、生きているもの、時間の経過を踏まえてデザインするものです。「こういう庭にしたい」という要望を投げかけると、具体的な形に落とし込むのでなく、「そこはこんな変化や成長がありますから、そこを見越してこんなふうに考えましょう」と、住まいや暮らしの未来を指し示してくれます。知識と技術だけでなく、この想像力が頼もしい疋田さんです。
庭を楽しむというのは、自然や時間や未来と触れ合う楽しみです。外構や植栽を後回しにすると、いい家はできません!


と言いながら、今回、この家に住まう私の家内こと広報の大瀧彩央里にたしなめられたのは、これまで庭づくりについて何度も相談を持ちかけられていたのに、ぜんぜん耳を貸さなかったようです。私は建物のプランで手一杯、頭一杯だったようです。
でも、これではダメです。建物と暮らしと一体で庭や植栽を考えることはとても大事です、と自分に改めて言い聞かせます。
この日は、庭づくりを一番具体的に考えていた家内のイメージを元に、庭のある暮らしが浮かんでくるような話し合いができました。




こんな離れがあったらいいのに


このプロジェクトの設計デザインのパートーナー、デザイナーの中村圭吾さんとは、母屋に隣接する草屋根棟について。
草屋根棟は、自宅兼モデルハウスの計画に合わせて、お客様との打ち合わせスペースのために計画を始めた棟です。そして、母屋だけでは紹介しきれない大工が建てる家のデザインやしつらえをモデルハウスとして盛り込むことを考えていました。


外観こそ母屋との繋がりを考えて住宅の佇まいですが、中は生活空間でなく、打ち合わせスペースです。今回は、お茶を出せるくらいのミニキッチンとバックヤードの什器について打ち合わせを行いました。


中村さんが提案してくれたのは、股旅社中の会員メーカー、杉山製作所の黒鉄フレームのキッチンです。母屋の人研ぎキッチン(前回記事参照)とは対照的な雰囲気です。この建物にとても合っています。母屋と同じく、
草屋根棟への思いも熱を増していきます。


打ち合わせのための大きめなテーブル。お子さんが遊べる畳の小上がり。
黒鉄フレームのキッチン。床はコンクリートの土間。こじんまりとした木造平屋で屋根は草屋根。打ち合わせのための空間を作っていたら、母屋があってこんな離れがあったら素敵だろうな、という内容になってきました。


靴を履いたまま近所の方や知人とお茶をしたり、趣味の教室や小さなお店として使ったり。そんなふうにも感じていただける棟になりそうです。


作業場では、草屋根棟の棟木、登り梁から始まり、桁、染、柱材の刻みが完了して、まもなく上棟です。