造作家具づくり
踏み板がベンチになる階段図書室

居心地のいい小さな読書コーナー
階段の途中に、小さな本棚をつくりました。家中の本を収納する本棚ではなく、新しく買ってきた本や、ときどき広げる図鑑や趣味の本、子どもたちのお気に入りの絵本を置く小さな本棚です。

階段は家の中の通り道ですが、途中に本棚があることで居場所が生まれます。踏み板がベンチです。閉じられた空間ではありませんが、間仕切りでリビング、ダイニングからの視線が遮られるので、ちょっとこもった雰囲気が味わえます。

本を読むならソファもデスクもダイニングテーブルもあるけれど、階段にちょこんと座って、しばしの時間を楽しむ。こっちの居場所もいいな。
そんなふうに感じられるコーナーをつくろうという発想から生まれた、小さな読書コーナーです。
階段を家具としてデザインして場を生み出す
大工の家は、大きな家ではありません。大瀧建築の家としては、どちらかというと小さめの家です。
そのため、階段をできるだけ省スペースにおさめるために、コンパクトな回り階段を新たに設計デザインしました。

加えて考えたのは、階段をただの通り道とするのではなく、階段を造作家具としてとらえて、そこに居心地のいい場をつくり出すことです。そのために、小さな本棚を設けました。この本棚は、後付けで設置しているのでなく、階段の構造と一体でつくっています。

造りの特徴は、構成がシンプルな分、良質な材料を惜しみなく使っていること。構成をシンプルにするには、加工精度と施工の手間がかかるのですが、大工の仕事のみでつくりあげるので、そこは惜しみなく技術と手間を注ぐことができます。
シンプルで軽快、そして居心地がいい。大工工務店らしいデザインの階段になったと思います。
型にはまっていない自由で居心地のいい場所
実際に住み始めて、子どもたちの絵本を置くと、たちまちここがお気に入りの場所となりました。兄妹の二人で、並んで座ったり段違いで座ったり。ここならお行儀も気にしなくていいや、といった自由な居心地を楽しんでいるのかもしれません。こもった感じの秘密基地の趣があることもお気に入りの理由ではないでしょうか。

ひょっとしたら、親子の会話や夫婦の会話、ここだから話したくなるみたいな、大事なコミュニケーションが生まれる場になるかもしれません。というのは大袈裟ですが、型にはまっていない自由で居心地のいい場所は、こんな場所かもしれません。

くつろぎの場所は、ソファとたたみコーナーだけではありません。型にはまっていない自由で居心地のいい場所がいろいろある家をつくりたいと思います。